チャーチ・モード(教会旋法)は、なかなか使いどころが難しく、触れる機会の少ないスケールではないでしょうか。
そもそも、チャーチ・モードって何?どこで使うの?という基礎的な内容を別記事にしました。合わせてご覧ください。
上記事でも触れていますが、チャーチ・モードをダイアトニックコード上で使うのはなかなか無理があります。主にワンコード・ツーコードの楽曲において、チャーチ・モード特有の音を邪魔しないコードを選ぶことで、その味を最大限出せると思っています。
今回は2コードの進行において、どんなコード進行の上でどんなスケールが成り立つか、逆に言えば各チャーチ・モードはどんなコード上で適切に使えるかということを見ていきます。
注意事項:
- 本記事ではジャズで使用される現代のチャーチ・モードについて触れています。
- 本記事ではすべてのチャーチ・モードにおいて主音(始まりの音)をCとします。
- 想定される2コードはあくまで一例です。
イオニアン・スケール
いわゆるメジャースケールです。明るく朗らかな雰囲気。
- Cイオニアンスケール:ド / レ / ミ / ファ / ソ / ラ / シ / ド
- 想定される2コード:C / F
使い勝手のいいスケールです。特に気をつける点はないでしょう。私達にもっとも染み付いているスケールです。
ドリアン・スケール
マイナースケールの第6音が半音上昇したスケール。オリエンタル、おとぎ話な雰囲気。
- Cドリアン・スケール:ド / レ / ミ♭ / ファ / ソ / ラ / シ♭ / ド
- 想定される2コード:Cm / F
通常、Cマイナー・スケールではSD(サブドミナント)が「Fm」となりますが、これではコードトーンの「ラ♭」とドリアン・スケール特有の「ラ♮」がぶつかってしまいます。ドリアン・スケールでは第6音の上昇に合わせ、SDを「F」に置き換えることで、音の濁りを解消します。この「Cm→F」を演奏してみるだけでも、ドリアンの響きが感じられますよ。
ドリアン・スケールを用いた楽曲の例:フリーBGM素材 『一気に進もう』 試聴ページ|フリーBGM DOVA-SYNDROME
フリジアン・スケール
マイナースケールの第2音が半音下降したスケール。
- Cフリジアン・スケール:ド / レ♭ / ミ♭ / ファ / ソ / ラ♭ / シ♭ / ド
- 想定される2コード:Cm / D♭M7
A♭M7 / D♭M7などでも音自体はハマるのですが、これは主音がA♭になってしまって、ただのA♭メジャースケールになっちゃいます。あくまで主音がCにあることでフリジアンとなります。音使いはA♭メジャーの音を、Cmの上で使うことによって、きれいで繊細・切ない感じを受けます。少し重たい感じも。
他には、Cm / Fmの進行なんかも、フリジアン特有の「レ♭」と干渉しないので使えると思います。
リディアン・スケール
メジャースケールの第4音が半音上昇したスケール。スケール単体では調子っぱずれ、マヌケな雰囲気。
- Cリディアン・スケール:ド / レ / ミ / ファ♯ / ソ / ラ / シ / ド
- 想定される2コード:C / DonC
調子っぱずれと書きましたが、上記のコード進行の上では力強く勇壮なメロディーが書けます。映画音楽やオーケストラによく合います。
ミクソリディアン・スケール
メジャースケールの第7音が半音下降したスケール。民族音楽、ヨーロピアンな雰囲気。
- Cミクソリディアン・スケール:ド / レ / ミ / ファ / ソ / ラ / シ♭ / ド
- 想定される2コード:C / B♭
第7音が短7度になってしまって、リーディングトーンが欠如。終止感が少し薄くなります。アイリッシュ音楽などでよく使用します。こちらも使い方によっては勇壮な感じ。前述のレイアースメインテーマでも使われています。
他には、C / Fの進行なんかも、ミクソリディアン特有の「シ♭」と干渉しないので使えると思います。
参考曲:The Corrs- Toss The Feathers(YouTube)
エオリアン・スケール
いわゆるマイナースケール。ダイアトニックコード使い放題。
- Cエオリアン・スケール:ド / レ / ミ♭ / ファ / ソ / ラ♭ / シ♭ / ド
- 想定される2コード:Cm / Fm
「暗い」を代表するマイナースケールですが、7thや9thを多用すると、おしゃれな曲になります。
(おしゃれな曲の)参考曲:Best VGM 172 – Donkey Kong Country – Aquatic Ambiance
ロクリアン・スケール
マイナースケールの第2音、第5音が半音下降。チャーチ・モードの中で唯一、安定する響きの完全5度が欠如したスケール。音の響きも怪しく不気味な感じ。難解ですが、うまく使えると不思議・神秘の雰囲気が表現できます。
- Cロクリアン・スケール:ド / レ♭ / ミ♭ / ファ / ソ♭ / ラ♭ / シ♭ / ド
- 想定される2コード:Cdim / G♭
やっぱり dim コードから始まるのはなんだか気持ち悪い。もともと不思議な響きだからか、前者をCm で押し切ってしまっても、あまり違和感はありません。