音楽で変わる、ムービーの意味―BGMの選び方について考える

BGMは、普段無意識に使っていますが、その選び方について考えることってなかなかないですよね。今回は極端な例を用意して、BGMの役割について考えてみたいと思います。

ぴったりなBGM

言うまでもなく、映像とBGMはその情景が一致していると、お互いの説得力を増します。悲しい映像に悲しいBGM、楽しい映像に楽しいBGM、と言った具合で、お互いがすっと溶け込み、引き立て役として機能します。

以下の動画では、渋滞の映像に、少し哀愁のある、日常の暮らしのBGMをつけました。わりかしぴったりハマっているのではないかと思います。

説明的なBGM

前述の「ぴったりなBGM」と似ていますが、もう少し説明色の強いBGMです。抽象的にいえば、悲しい映像にすごく悲しいBGM、楽しいBGMにすごく楽しいBGMをつけたり、ナレーションの代わりにBGMで説明をしたり、ということを試します。

以下の動画では、渋滞の映像に、悲しいBGMをつけました。先ほどとは違って、この動画が何かを説明しているように感じませんか?

キャプションにも記述しましたが、動画に悲しいBGMをつけることで、仮に悲しいことがおこっていなくても、悲しいことがおきているような説明的な動画となります。この場合は渋滞の騒音や、排気ガスの被害が深刻化している、というような現状を伝えるドキュメンタリー風に仕上がっています。

(※実際の映像はそれを意図したものとは限りません)

状況を一変させるBGM

ここまでは日常を切り取った、もしくは少しの説明を付加したBGMを見てきました。ここでは、BGMにもっと大きな役割をもたせることを考えてみます。

以下の動画では、渋滞の映像に、ボス戦のような戦いのBGMをつけました。これによって映像の意味合いはどう変わるでしょうか。

キャプションでは「交通渋滞との戦い」と書きました。そのような解釈であれば、毎日交通渋滞と戦う市民の心の心理描写を表した動画となるかもしれません。また、別の解釈として、実は街の中心部に巨大生物が現れて逃げている場面かもしれませんし、車を動力とするモンスターが街の車を魔力でかき集めている場面かもしれません。BGMが少しミスマッチなことによって、意味が大きく変わってきます。この映像だけでは前後関係がわからないので、想像が掻き立てられるムービーとなりました。

コメディーBGM

コメディー、コミカルなBGMは最強です。どんな映像でも、このBGMをつければ笑いのもととなるのです。ただ、動物や子供のほのぼの動画など、最初に説明した「ぴったりなBGM」の部類になるので、笑いというよりは癒しになるかもしれません。

それでは、渋滞の動画でコミカルなBGMをつけるとどういう状況になるか見てみましょう。

ちょっと俯瞰した立場から、この状況を見て、「また今日もこの調子だよ・・・」と呆れているような絵が見えます。運転手の心理も、イライラや焦りより、諦めが強く見えるようなBGMです。

このカテゴリでは、地球爆発の映像にドリフのBGMがついたムービーが有名ですね。

ムービーはBGMによって七変化

このように、BGMの役割は、何も動画をより見やすくするためだけのことではありません。ときには動画を装飾し、説明し、状況を変えてしまう、そんな役割がBGMにはあるのです。BGMを「これがぴったり」というのを選ぶ以外にも、この視点を持って「今日はあえてこっちにしてみよう」という選び方も楽しいと思います。

今回はムービーに限って説明をしましたが、店舗やイベントのBGMでも同じことが言えるでしょう。(コミカルやシリアスはやりすぎかもしれませんが、)説明的なBGMであれば、「このお店はオシャレな店なんだぜ(SMOOTH JAZZ)」「このお店は流行の最先端を行ってるぜ(HOUSE)」「不思議な雰囲気を味わってほしい(AMBIENT)」みたいな感じで選ぶことができます。楽しかったので、お店シリーズもまた追々書いてみたいなと思います。

使用BGMについて

(ドリフ以外の)4つの動画について、映像素材はNHKクリエイティブライブラリー様よりお借りしました。BGM素材はすべてハヤシユウの作品です。

  1. 1. ありふれたしあわせ – ハヤシユウ

2. 哀しみのアルペジオ

3. 決戦

4. おなじみの風景

 

 

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