先日、チャーチ・モードの使い方について書いてみたところ、思わぬ反響があったのですが、少し小難しい内容もあったと思いますので、初心者向けに少し補足を。
この記事では、そもそもチャーチ・モードって何?どこで使うの?というのを、できるだけ簡単に説明していきます。ダイアトニックコードについてはあらかたの知識がある前提で書いていますので、その部分が不安な人は別の参考書やサイトで調べてみてください。
そもそもなぜチャーチ・モードを使うのか?
現在の音楽はそのほとんどが調性のはっきりした音楽となっています。「調性がはっきりしている」というのは、主役の音があって、その音を中心にダイアトニックスケール(端的にいうと、ドレミファソラシドだけ)で構成されている、ということです。
チャーチ・モードの考え方は、「調性にはまってるの、かっこ悪くね?」という、天邪鬼のひねくれた考えだと思って良いです。「主役はCの音だけど、音自体はGメジャースケールの音使っちゃうもんね」というひねくれが、結果としてチャーチ・モードを生むのです。
チャーチ・モードがとっつきにくい理由は、このひねくれた音が聞き慣れていないところにあります。生まれたときからチャーチ・モードの曲ばかり聞いて育っていれば別ですが、私達の多くはダイアトニックスケールばかりを聞いて育ってきました。だから、チャーチ・モードは意味がわからないし、使い所もわからないのです。チャーチ・モードが難しいのは当たり前で、わからなくても心配しないでください。
チャーチ・モードはどこで使うのか?
ということで、チャーチ・モードを使う場面は「従来のはっきりした調性を感じさせたくないとき」です。これだと少し抽象的な表現ですので、具体的な例をいくつかあげてみます。
- 明るいポップスを作りたい!・・・メジャースケールでOK
- 民族調で楽しい感じの音楽を作りたい!・・・ミクソリディアンスケールでも使ってみる?
- 民族調でダークな感じの音楽を作りたい!・・・ドリアンスケールでも使ってみる?
- 悲しくて暗い曲を作りたい!・・・ハーモニックマイナースケールでOK
- 宇宙的・不思議な響きの曲を作りたい!・・・ロクリアンスケールでも使ってみる?
つまり、いかにも明るい曲、いかにも暗い曲、ではない曲を作るときに役に立つんです。チャーチ・モードは歌ものに使うには個性が強すぎるため、多くはインストの楽曲やBGMに用います。
チャーチ・モードのルールは一つ
チャーチ・モードは、天邪鬼スケールということで、調性をはっきりさせたく「ない」ときに使用します。ジャズのアドリブではチャーチ・モードを使った部分だけ「なんだか浮いたようなフレーズ」になって、かっこよく聞こえたりしますが、感じ方は人それぞれです。絶対に正しいというわけではありません。
チャーチ・モードを使う際のルールは一つで、「聞いていて気持ち悪くないか」という判断基準を持つと良いでしょう。言い換えれば、「チャーチ・モード・スケールの音とコードの音がぶつからなければOK」、だたそれだけのことです。いくつか具体例を見てみましょう。
良い例:Cコードにミクソリディアンスケールを乗せる
Cというコードに、ミクソリディアンスケールを乗せる場合を考えてみます。
Cコードの構成音は、「ド」「ミ」「ソ」です。アボイドノート(メロディーにあまり使うべきでない音)は「ファ」。
それ以外の音については、「レ」=9th、「ラ」=13th、「シ♭」=7thということで、それぞれCコードの上で使っても違和感のないテンションとなります。Cコードの上でCミクソリディアンスケールを使うと、「あまり聞き慣れないけど、気持ち悪くもない」とい印象を受けます。
良くない例:ダイアトニックコードの進行にミクソリディアンを乗せる
ただし、あくまでも「Cコードの上では」使えるというところに注意です。そのままCのダイアトニックコードを使って進行を作ったとします。
例:C→Am→Dm→G7
これらのコードそれぞれにCミクソリディアンスケールを乗せるとどうなるでしょうか。
- Amの構成音は「ラ」「ド」「ミ」。「シ♭」の音は(♭9)のテンションとなり、かなり気持ち悪い響きです。
- Dmの構成音は「レ」「ファ」「ラ」。「シ♭」の音は(♭13)のテンションとなり、これも少し違和感があります。
- G7の構成音は「ソ」「シ」「レ」「ファ」。「シ♭」の音は「ラ♯」と書き換える(異名同音)と、(♯9)のテンションとなり、強い緊張感を生みます(が、ブルースやファンクでは頻繁に使う音であり、慣れれば違和感はありません)。
これらをまとめると、普通のダイアトニックコードで作った進行の上に、同じチャーチ・モードを乗せ続けるのは、ただひたすら気持ち悪いということがわかります。
では、どんなコード進行なら同じチャーチ・モードを使い続けることができるのか、ということを冒頭の記事で触れています。そのチャーチ・モードの特有の音を含むコード、あるいは特有の音に干渉しないコードを使えば良いのです。
チャーチ・モード特有の音に干渉しないコードを選ぶ
たとえば、C→Fという進行にCのミクソリディアンスケールを乗せた場合を考えます。
Cの上では、シ♭は7thの音でした。Fの上ではシ♭は11thのテンションとなり、どちらのコードもシ♭に干渉せず、ほどよく受け入れてくれます。
チャーチ・モード特有の音を含んだコードを選ぶ
ダイアトニックコードの進行ではなく、チャーチ・モード特有の音を含んだコードを使ってみます。ミクソリディアンでは「シ♭」の音が特徴的なので、B♭というコードを使用してみます。
おそらく、聞いた感じだとこちらのほうがぴったりはまっているように聞こえると思います。